テラスハウス

鎌倉恩返し計画 ◯△□テラスハウス 進捗報告ブログ

鎌倉・湘南を中心に注文住宅の家づくりを行ってきた技拓が、20年ぶりに提案する賃貸住宅 (テラスハウス)のプロジェクト、「◯△□テラスハウス(技拓テラスハウス)」。このページでは、プロジェクトのその後や進捗状況についてご報告していきます。

>プロジェクトのページ

第13回「今年の12月までには、土地オーナーと出会いたい」

○△□テラスハウスの大切にしたいポイントを再度検討

2025年を迎え、そろそろ1月も終わろうとする中、○△□テラスハウス社内ミーティングを行いました。昨年の秋以降、私たちのコンセプトを鎌倉・湘南の個性的な不動産会社さんをはじめとした様々な有識者の方々に伝えたり、集合住宅の大家業としてのお話を伺ったりとしてきて、大家と住人の方々、そして街の人たちとのコミュニティは、どのようなあり方がいいか?という議論をする機会が増えました。それはそれで、大家さんとここに住む人たちとの関係性、コミュニケーションの塩梅といった考察も深まって良かったと思っているのですが、年を越し、お節を食べ、お雑煮を食べ、さあ、2025年も頑張ろうと思ったタイミングで、改めて○△□テラスハウスの価値を考え、ここ鎌倉にテラスハウスを建てる、鎌倉に住む、ということを考えた時、私たちが最も大切にしたいことは何か?ということを話したんです。

そして「第一は、鎌倉の街並みに寄与するということだよね」と、改めて社内で頷き合いました。そうなんです。鎌倉の魅力である、この街並みを、どう残し、どうより良く活かしていくか、ここが私たちの原点だよね、と。

この想いに共感していただける土地オーナーの方に出会って、具体的な土地について、これまで培ってきた技拓のノウハウをご提供しながら、一緒に考え、街並みに寄与できるテラスハウスをつくっていきたい。改めて、その想いを社内のメンバーで確認できました

そのためには、まず、私たちが考えていること、このプロジェクトのことを一人でも多くの方に知っていただくこと。今年は、さらに知っていただく活動を行なって行きますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。

街並みに寄与できる建物を。

↓こちらは、ブログのvol.11で紹介させていただいたプチ体験会&情報交換会”の模様です。よろしければご覧ください。

“鎌倉・湘南の「まち」を想う地主と出会いたい!~●▲■テラスハウス プチ体験会&情報交換会”

第12回「リバーサイドテラス山本を見てきました」

32年を経た緑と建物、そして空間構成

技拓が32年前に手掛けた、テラスハウス「リバーサイドテラス山本」。藤沢は片瀬海岸、境川沿いのゆったりとした敷地にそれはあります。2棟が雁行型に配され、松の木越しに見えるレンガの貼られた外観は、ご近所の方々にも愛されているよう。「ここの雰囲気、建物の佇まいが好きで、前の道を犬の散歩コースにしています」という方もいらっしゃいます。ほとんど空室の状態になることはなく、お引越しされた部屋が出ても空室情報として出る前に次の入居者が決まるという、おかげさまでずっと人気物件です。なので、なかなか部屋の中を見ることができないのですが、今回たまたまその機会をいただき、室内を見学してきました。

松の木越しに。1993年に第38回神奈川建築コンクールで奨励賞を受賞しました。

プライバシーも考慮し、眼光型に配しています。
こちらの中を見学しました。
竣工時から変わらない木製のドア、明るい玄関。
2Fのリビング。角住戸なので、2面採光です。
天窓から光が入ります。天窓の位置が技拓らしいと感じました。
白壁の陰影が印象的です。
窓の外には松の木。景色を切り取るような窓の配置が得意な技拓らしさ。
振り返るとキッチン。2面採光でL字型。
隣には6畳の和室もあります。

時を経て趣の増した緑と建物のもつ雰囲気は素材違えどやはり技拓。そして室内の空間構成は今でも新鮮さすら感じます。32年前に建てられた「リバーサイドテラス山本」は、私たちがこれから出会うオーナーの方とともにつくっていきたいと考えている〇△▢テラスハウスの元祖ともいえる建物だと、あらためて感じました。

第11回「湘南スタイルmagazine 100号記念特集」

50周年企画「●▲■(ぎたく)テラスハウス始動‼︎
「いい数値が出ているように思います」

まずは、湘南スタイルmagazineさん100号、おめでとうございます。思い起こせば、創刊2号目に「湘南スタイルのアーキテクチャービルダー」として技拓を取り上げていただいた時からのお付き合いです。その湘南スタイルmazineで、私たちの妄想からスタートした連載「“鎌倉恩返し計画” ●▲■テラスハウス」は今回の100号で4回目。さらにたくさんの人に協力いただくこととなりました。土地オーナーに繋がりを持つ鎌倉、湘南の個性的な不動産会社の方々、財務コンサルタント、地方創生の専門家、そして建築家の方に集まってもらい、たくさんの貴重なご意見をいただいた大ディスカッション大会の模様が記事になっています。その時の会のタイトルは、ちょっと長いですがこちら。

~鎌倉・湘南の「まち」を想う地主と出会いたい!~●▲■テラスハウス プチ体験会&情報交換会

開催場所となったのは、このプロジェクトの原型となった鎌倉・極楽寺にある「ちびバコ」。家主である大学教授の毛利勝彦さん(年末年始の技拓ラヂオにもゲスト出演いただきました)の案内で、空間設計や広さをみんなで体感するところから始まり、その後、プロジェクトの主旨をあらためてご説明し、議論へ。

議論のテーマは、入居者像について、家賃について、大家から見たこのプロジェクトのメリットについてなどさまざまな角度から行われました。20坪で3棟を配した想定で利回り計算した資料を皆さんに見ていただくと、「いい数値が出ているように思います。技拓の建物で賃料20万円は堅いですし、利回りが想定6~7%というのは、投資対象としても販売しやすいです」と、財務コンサルの黒田さん。他の方々も頷いていらっしゃいました。他にも、みなさんからいろんなご意見をいただきましたので、ぜひ、湘南スタイルmagazineも合わせてお読みいただければ幸いです。

第10回「ちっちゃい辻堂を見学してきました。第2回」

普通のマンションを建てる方がリスク?

入居希望者とはどのようなコミュニケーションをしているのですかと石井さんに聞いたところ、2〜3回足を運んでもらって、今までどんな暮らしをしてきて、これからどんな暮らしをしていきたいかを伺い、石井さんからは、どんな思いで運営しているかという話をしているそうです。それは青豆ハウスにも通じるところがあり、私たちが企画する○△□テラスハウスも同様です。続けて、石井さんからは、思いは伝えるものの「私が言うところの6割くらい理解してくれればいいな」と。あとは、「ここに暮らしてから。ここはコミュニティが形成されているから、その中でより良い形になっていければ。僕の想像を超えるくらいに」と。大家さんからの発信が全てではなく、ここに暮らす人たちがお互いにより良いものにしていくというスタンスでいるということですね。

そもそも、「このちっちゃい辻堂」の構想はいつ頃から考えられていたのか。この辺りには古くからの地主がいるとのこと。ただ、相続のたびに土地が切り売られ、相続対策として画一的なマンションやアパートが立ち並び、緑がなくなっていったそうです。どこにでもあるような街並みになっていくことを危惧していたと。そんな中、地主としての経営を祖父から引き継いだそうです。石井さんは言います、「普通のマンションを建てる方がリスク高いと思います。新しいマンションが出たらそちらの方が選ばれるというような状況の繰り返し。そんなことが分かっているのに。だったら、未来に可能性があることをやった方がいい」と。それがこの「ちっちゃい辻堂」。30坪に切り分けるのではなく、大きな敷地のまま分筆だけしてバランスよく配棟する、ランドスケープとして資産価値の上がるもの。家の窓からも素敵な景色なものになるものを。そんなことをお話しされていました。

「昔、地元の名士と言われる人というのは、言われるだけの所以があったと思います。小学校に土地を寄贈するとか。今は相続税のこととか再開発がどうとか、ということしか頭にないということも多い。ただの大きな箱を作ってどうするんだ。次の世代にどんな街を残していきたいか。良き先祖であるには何をすべきか」。そんなことをお話しいただきました。○△□テラスハウスの先輩として、同志としての言葉を、私たちもしっかり受け止めました。ここに共感いただける地主さんとプロジェクトを進めていきたいと新たに思えた素晴らしい時間となりました。

大家の石井さん

第9回「ちっちゃい辻堂を見学してきました。第1回」

ここはまるでサンクチュアリ

先日の青豆ハウスに続き、今回は辻堂にある「ちっちゃい辻堂」へ。なんとも可愛らしい名前ですが、ここは長屋や戸建て、母屋、そしてコモンスペースから成るとても素敵な賃貸住宅なんです。場所は、JR東海道線の辻堂駅から歩いて13分。海に続く大きめの道からは少し奥まったところにあります。この辺りはよく車で通ることもありましたが、知りませんでした。一歩足を踏み入れると、なんだか軽井沢のような雰囲気。木に囲まれ小鳥がさえずり、土と落ち葉を踏みしめながら、思わず木漏れ日を見ていました。賃貸住宅は、そんな環境の中に優しく配置されています。

「自分の周りにいる鳥の種類が多いほど、人の幸福度は増すと言いますからね」。そう語るのは、母屋に住む大家の石井光さん。この辻堂で続く13代目となる地主さんです。「ゆるやかにつながってつくる土とつながった暮らし」をコンセプトにできたのがこの「ちっちゃい辻堂」。石井さんはもともと大学で景観生態学を学んでいて、地域の生態系や風景、生き物を大切にしたいと思っていたのだとか。なるほど、それがこの環境をつくっているのですね。ここの敷地の地面、これは微生物舗装といって、有機物や炭、石などで舗装して、森と同じように雨水を土の中に染み込ませ、微生物を増やし、健全に土の環境を循環させるというものらしい。駐車場もコンクリートではないんです。表層はウッドチップで柔らかいのに、車の重み沈んだりしない工夫もされているとのこと。そしてここに植えられた木々は、横浜の造成で伐採予定だったものを譲り受けてきたのだとか。建物は神奈神奈川県産の木材を使っていて、自然に抗わないといいますか、ここはまるでサンクチュアリ。健全な自然環境づくりをしているというのが、いたるところに感じられます。

つづきます。

第8回「青豆ハウスを見学してきました。第4回」

建物・空間について

これまで、コミュニティに関することを中心に書いてきましたが、実際の建物はどうだったのかといいますと、それはもう、大変参考になる空間でございました。○△□テラスハウスは、技拓の「ちびバコ」というプランを基本に考えていて、2階建をベースにしているのですが、青豆ハウスは3階建。青木さんのお宅を見学させてもらったのですが、3階建の2階が玄関になっていて、中に入ると正面にダイニングスペース。その奥にはキッチンがあり、水回りや居室などは上下の階という空間構成。家族の暮らしの中心は、食なんだという意思が感じられ、コンパクトながらも使いやすさが考えられたゾーニングで、スペースの大小の取捨選択がとても参考になりました。

ここに鎌倉という地を活かすには?と考えると、アウトドアリビングとなるデッキや、風が通り抜ける設計、そして技拓が得意とする「余白」。そんなことをさらに具体化させていけるように、さらに考えを巡らせていきたいと刺激になりました。

そして、今回の青豆ハウス訪問は、これまで技拓が考えてきたものと大変近い哲学があることを実感でき、後押しいただいたような気持ちになりました。

青木純さん(真ん中)と。左は技拓代表の白鳥ゆり子、右は技拓の松本晴子

第7回「青豆ハウスを見学してきました。第3回」

道行く人たちとのコミュニケーションとセキュリティについて

○△□テラスハウスの完成予想イラストをご覧いただけるとお分かりになると思いますが、敷地に塀は建てられていません。技拓としては、考えるセキュリティについて。私たちはこう考えています。そこに住む人、近隣の人々の目が、たいへん有効な防犯になるのではないかと。つまり、常に周りの目が届くという状態です。

青豆ハウスが紹介されている本「PUBLIC LIFE(パブリックライフ)」に、“ひらきながら守る方法”と書かれています。塀で囲って住人を守るという方法ではなく、建物のまわりに草花の植え込みを作り、住人たちで水をやり、雑草を抜き、大事に育てる。道行く人にとっても、ふと心が安らぐ場所になってくれたらいいなという思いも込めて。でも、中には心無い人はいるもので、植えた花が抜き捨てられたり、タバコのポイ捨て、犬の糞の不始末もあったりしたそうです。そうした状況を改善するために何をしたかというと、“黒板に手書きでメッセージを書く”というもの。境界線を緩くしている青豆ハウスの良さを損なわず、この困りごとを”モノ”で解消するのではなく、”出来事”で解消したいという方針から出たアイデアだそう。初め、「花を踏まないで」と心を込めて描いたものの、効果はなかったようでしたが、「今日は母の日ですね」「暑くてお散歩も大変」とか住人が交代で、目を留めてくれる人に語りかけるように描くようになると、効果が出てきたそう。通りすがりの人から「なんでやっているの?」と声が掛かったり、道行く人たちとのコミュニケーションが生まれるようになったのだとか。そしてある日、「いつもありがとう。朝からいい気持ちになります。楽しみにしています」という、近所のおじいちゃんからのお手紙が黒板に貼られていたそう。してほしくないことに対して、眉をひそめて注意したり監視を強めるのではなく、まったく違う角度からその場所が注目されることで「しづらい環境」をつくることができるのだということを、青豆ハウスの住人が身をもって知ったと書かれていました。

○△□テラスハウスが地域にもひらかれた場所となり、道行く人たちとのコミュニケーションが生まれることが、結果としてセキュリティにつながる。そんなことを実現させたいねと、社内で話し合っている私たちにとっても、たいへん勇気づけられるエピソードでした。

第6回「青豆ハウスを見学してきました。第2回」

オーナーと入居者同士の心地よい関係性について

建物完成前募集が功を奏し、青豆ハウスが竣工する2ヶ月前には全ての部屋が契約で埋まっていたそうです。そのための仕掛けとして、早く契約するだけのメリットを提供することが必要だと考え、契約が早いほど、部屋のカスタマイズが可能ですと提示したのだとか。具体的には、キッチンの天板を、ステンレスとラワン(木材)、大理石から選べますとか。水栓を選べますとか。キッチンを選びたいという人は結構いたようで(確かに賃貸住宅でキッチンを選べるというのは、なかなか無い)、とても効果があったようです。
賃貸でありながら充実しているキッチンを素直に素敵だと感じて、〇△☐テラスハウスでも重視すべきポイントだと話に上がりました。

“みんなで手間暇をかけることを厭わずに楽しめる”。そんな内容のことを募集時の書面に書いているそうで、「これが入居のハードルにもなっています。手間暇を厭わない人は、コミュニケーションすることも厭わず、いわゆるクレームになりづらい。住人お互いがいい関係性、状態でいることができるんです」と。

コロナ禍には、小さい子どもたちの貴重な遊び場となった中庭には、実のなる木があり、ピザ窯もあります。ピザ窯は入居後みんなと2日掛けて作り、木は植樹祭と称してみんなで植えたとのこと。「ただ与えられただけのものは、使わなくなるので」と青木さん。だからここでは、住人が木のメンテナンスをし、梅が成れば梅酒を作り、葡萄もブルーベリーもみんなで収穫するのだそう。ちなみに、それぞれの住戸の中は、一面の壁を、自分たちで刷毛を使って塗れるようにして、これも、「長く住んでいるうちに色が剥がれてきた時、気分を変えたくなったりした時に、自分たちの手でメンテナンスを楽しめるようになって欲しい」という思いからとのこと。技拓のHP内にある○△□テラスハウスページにも、メンテナンスについて説明している箇所のタイトルには「みんなで手間を楽しみ、愛着を育む」と書かせていただいています。このお話もまさに、技拓テラスハウスが大切にしたい、賃貸住宅で目指していきたい理想の暮らし方のひとつでした。

青豆ハウスには、特にルールはありません。あるのは家訓「無理せず、気負わず、楽しもう」だけ。お掃除当番なんかの分担はしているけれど、無理な時はサボっていいよ、というサブルールがあるんだとか。

お互いが思いやるという関係性が、この青豆ハウスで生まれていました。「大家は、湯加減を整え続けることが仕事。はじめは大家としての熱いリーダーシップを持って、みんなに求めることもしたけれど、求めたところで、求められた人は窮屈になる。だからみんなが自然にできるように整えたらいいんです」と、青木さんはお話してくれました。

強いリーダーシップを持つことを大家さんに求めるのではなく、入居者みんなが心地よい関係性を技拓もサポートしながら作り上げる、その提案をしていけたらいいなと思いました。

このあたりのことを、さらに詳しく知りたい方は、
こちらの本をぜひ。

第5回 「青豆ハウスを見学してきました。第1回」

入居者募集について

鎌倉で、〇△☐テラスハウスを進めるにあたり、私たちの考え方に近く、すでに実現をしている集合住宅を見てみよう。ということで、技拓の社員みんなで東京は練馬にある青豆ハウス(2014年竣工)に行ってきました。お話を伺ったのは、オーナー(大家さん)の青木純さん。青豆ハウスの住人でもあります。 “育つ賃貸住宅”をコンセプトに、8世帯のご家族が暮らしています。「昔ながらの長屋的と言いますか、醤油が切れたから貸してとか、パスタを茹でようと思ったらパスタがなかったんだけど、ある?とか、そんなやりとりが住人の間で生まれているんです」と、青木さん。

印象的だったのは、入居者募集の時の話。通常、賃貸住宅は、建物が出来てから募集を開始するのですが、青豆ハウスは、物件着工の時から入居者募集を始めたそう。募集する媒体は2つだけ。ひとつはシェアハウス専門のメディア「ひつじ不動産」、そして、面白い物件が載っていて、こだわりのある暮らしをしたい人が集まる「東京R不動産」。問い合わせをくれた人には建築現場に来てもらい、完成をイメージしたスケッチや完成予想図を見てもらう。建物に関する説明だけでなく、これまでどんな暮らしをしてきたか?これからどんな暮らしをしていきたいかという質問もしながら、青木さんの考える、ここでの暮らしぶりというものをお伝えし、一組ひと組、時間をかけて面談をされたとのこと。結果、想像力を持って、コンセプトに共感した人が入居してくれたようです。その後の入替時がある時は、入居希望者にも数組まとめて来てもらい、住人さんたちとも自然に会話していただけるようにし、相性なども確認して決めてもらっているそう。「住人お互いがハッピーに暮らすには、丁寧に会話をしながら、エントリーマネジメントといいますか、はじめにしっかりと価値観を確認することが肝心ですね」と。

入居者の組み合わせについては、事前にお互いの価値観を共有するために、丁寧に面談をするというお話は、まさに技拓テラスハウスでも、以前より話し合われていたものだったので、私たち深く頷きながら聞いていました。

第4回 「原点は“ちびバコ”」

今から7・8年ほど前、「小さく豊かに暮らす」をテーマにした「ちびスケ」という名前の小さな平屋プランを発表しました。おかげさまで「ちびスケ」は好評をいただき、現在、鎌倉山・那須・葉山に、そして「ちびスケ」を元にした、もう少し大きめの平屋も大磯に建っています。

その後、緊急事態宣言中に、単身の方々から「平屋を建てるとなると、大きな土地が必要なので、敷地を抑えることができる2階建てパージョンでプランニングをお願いできないか」という相談を何人かのお客様から受けます。それならば一緒に考えていきましょうという話しになり、3パターンの2階建て「ちびバコ」が誕生しました。こちらも大変喜ばれ、葉山、大磯、鎌倉と続けて3軒が建ちました。

20坪前後のちびバコは、単身・お二人用・小さなお子様ひとりの3人ご家族にうまく対応できるプランであることから、今回、この「ちびバコ」を繋げたテラスハウスにしようと、スタッフ全員一致で決まったのです。思えばこの10年、今回のテラスハウスに向けて準備をしてきたようにさえ感じた瞬間でした。常に時世の流れに自分たちの建物があっているのか、自問自答を重ねてきた賜物だと思っています。

もちろん、賃貸でも、小さくても、技拓の家として必要と思われるものはすべて躯体や意匠に盛り込みました。小さな庭を確保し、縦の空間構成を暮らしの中で感じることができ、無垢の良さや賃貸ではなかなか味わうことができないドライウォールの塗装仕上げを標準仕様にすることで、「賃貸だから」と、我慢しなくてはいけないことを少しでも軽減したかった。それこそが技拓で賃貸をやる醍醐味だと感じています。このテラスハウスには「家を体感してほしい」という、スタッフの思いが詰まっています。

第3回 「鎌倉恩返し計画」

街に主体をおいて、その街に溶け込むような賃貸で、なおかつオーナーにとっても住む側にとっても余白のある暮らしを提供することができたら、みんなが幸せになれると感じてやみません。私たちが目指している「街並みに寄与する」というのはそういうことなのですが、これって、鎌倉への恩返しともいえるのではないか。そんな話が湘南スタイルマガジンとの何回目かのミーティングで出てきました。鎌倉への恩返しとなってくると、妄想はさらに膨らみ、私たちがすすめている賃貸住宅の枠を裕に超えていきます。

「そういえば企業名や商品名の頭に“鎌倉”って付いているものって結構あるよね。それって 今確立されている“鎌倉ブランド”を使っているってことになると思うけど、私たちはその鎌倉ブランドを、例えばこの先100年に向けて育てていくことが大切なんじゃないか」。こんな話がミーティングで出てきました。「これは、技拓だけでなく、鎌倉に根ざしてきた企業、鎌倉に関わりを持つ企業や人たちと活動していくテーマにもなりますね。その旗振り役を湘南スタイルマガジンが担うというのはどうでしょう」。そんな風に話は展開し、“鎌倉恩返し計画”という大テーマが生まれました。技拓の「妄想テラスハウス」も、もちろん、その中にある一つの恩返しプロジェクト。これから、技拓の「妄想テラスハウス」のようなプロジェクトを、それぞれの企業のフィールドで検討してもらい、さまざまな鎌倉恩返し計画が生まれてくることを目指していこうと。この計画に参画してくれる企業はこれからの話になりますが、そんな想いを持って湘南スタイルマガジンの連載は2024年5月号からスタートしました。記念すべき初回は、浄智寺住職の朝比奈恵温さんに、100年後の鎌倉にどんなものを遺したいか、次世代にどんなものを引き継ぎたいかを、2回目となる8月号では、三味線音楽「荻江節」の荻江寿愼さんに、伝統を継承していくために必要なことを伺ったインタビューを行いました。そして、私たちの「妄想テラスハウスプロジェクト」の連載がスタート。まさに決して小さくない、大きな一歩を踏み出したという想いです。

第2回 「湘南スタイル、妄想を面白がる」

2023年11月のこと。技拓の毎年開催する「感謝祭」で、雑誌、湘南スタイルマガジンの担当者さんにスタッフがこのテラスハウスの話をしました。「今、50周年プロジェクトとして賃貸住宅を企画しているのですが、その実現までのプロセス、つまり、私たちの想いに共感してくれる土地オーナー様との出会いから、妄想を形にするための設計、そして着工〜。と時系列で追いかけたストーリーを、雑誌の連載コンテンツにできませんか」と。「なるほど!面白いですねえ」と湘南スタイルマガジンの担当者さん。そこからあれよあれよという間に、雑誌編集部とのミーティングが開催されました。私たち技拓のスタッフが大切にしたいことは、「技拓らしい賃貸であること」「街並みに寄与すること」。これは技拓が今まで注文住宅をやってきたことを、賃貸住宅に活かしていくことで、これからの賃貸住宅のあり方を、もっと素敵なものにしていきたいと考える同業者やオーナーの方々と想いを共有できるのではないかと考えたからこそ。このことを改めて湘南スタイルマガジンの方々と共有するところから「賃貸テラスハウスミーティング」は始まりました。技拓のアイコンともいえる、無垢のレッドシダーの外壁が、植栽から見え隠れする3または4連の長屋風建物の美しさはきっと圧巻だろう。鎌倉の地にきっと溶け込むだろう。みんなの妄想はどんどん膨らみ、雑誌の連載では「妄想テラスハウス」と名付けられました。

第1回 「妄想から始まった技拓テラスハウス」

「技拓らしい賃貸住宅」にチャレンジしていきたい。これは2022年に出版された書籍「時を経て、趣のある家」(※主婦の友社より)にあるインタビューページで、“社長[白鳥ゆり子]が見つめる未来”として話をしました。2024年、つまり今年の11月に創業50周年を迎える技拓が、次の半世紀に向け新たに挑戦したいこととして。実は、技拓では30数年前に数棟ではありますが、賃貸物件を手掛けたことがあります。その中のひとつにリヴァーサイドテラスという物件があるのですが、それはまさに、我々の理想とする街並みに寄与した賃貸物件。これは、私の心にも、そして多くの方々の印象に残る建造物です。

インタビューでは、技拓の「木」の家にもっと気軽に住んでいただき、良さを実感してもらいたい。オーナー様とは長持ちする賃貸住宅の価値観を共有したい。日本の賃貸住宅の品質向上を提案していきたいと語っています。

そんな思いをここ数年胸に頂いていたことで、私の中で妄想が広がっていきました。この妄想をしっかり実現させるため、50周年プロジェクトとして動き始めよう。そんな話を社内でするようになりました。「技拓らしい賃貸住宅って?」「街並みに寄与する賃貸住宅って?」「私たちの想いに共感してもらえるオーナー様に出会うためには?」などなど、妄想が徐々に具体的な話になってきました。